『潰玉』墨谷渉

文学界 2008年 12月号 [雑誌]

文学界 2008年 12月号 [雑誌]

この…小説初めて読んだ時……なんていうか……その…下品なんですが…フフ……勃起…しちゃいましてね……(吉良吉景風に感想)

なんかタイトルのイメージから、勝手に古井由吉系の重量感のある小説かしらんと読み始めたら、SMの話だったのでびっくりした。タイトルの意味はそのままでおっさんが色黒ギャルに金玉を潰される話。

これ、主人公の弁護士のおっさん青木が、ボコボコに痛めつけられながらも終始、踏み込みが浅いとかフォームがいいとか冷静な分析を続けているのがおもしろい。ちょっと阿部和重の小説を髣髴とさせる変にずれた変態なのである。金玉けられたい願望は自分にはないし(ないと思いたい)、日焼けギャルも遠慮したいのだが、それでも感情移入させてしまう描写力には唸らせられてしまった。

亜佐美に打たれる痛み、鋭痛ばかりでなく特に深く打たれたときの、嘔吐感や呼吸難による苦痛、長時間残る鈍痛への恐怖心や、本能的な防御の動作が起こるのと反対に、打たれるのなら、亜佐美が打ちやすく、きれいに入るようにと配慮する心理とが拮抗して足の開きが決まらなかった。

こういうディテールのこだわりがね、なんか、もう…あほでしょ。

あと青木が女の子三人とカラオケに行くシーン。

青木がサザンオールスターズエロティカ・セブンを歌うと三人の女は時々痛々しい目で青木を見た。

ここは爆笑した。シュールすぎるだろ。

時々挿入される不動産の話と肉体の話がどう有機的に繋がっているのかはいまいちぱっとこなかったのだけど、そんなのはどうでもよくなってて、青木のあまりのぶれなさに、最終的にちょっとカッコよさすら覚えている自分がいたのでした。