『不正な処理』吉原清隆
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/11/06
- メディア: 雑誌
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文体に血が通っていないというか、作者の意思が希薄な独特な文体で綴られている。そのせいで、主人公がどうも薄気味悪くて気持ちが悪いんだけど、変にリアリティーがある。僕が、これまでの人生ヒエラルキーの中心の側にいなかったのも関係していると思うのだが、分かりたくないのに、結構理解できてしてしまう。学校の空気とか誠の抱く人生観とか。もちろんなんでそうなるか理解できないところも多くて(イヌ探しが何のメタファーなのかも正直分からない。オチの意味も分からない)、心理描写や展開はあまりうまくないと思う。でも、ところどころの迫力、説得力はすごい。全体を通して現実味に乏しいのに、作品を覆う空気にはリアリティーがあるというなんだか得体の知れない作品だった。