『火車』宮部みゆき

火車 (新潮文庫)

火車 (新潮文庫)

カード破産を扱った社会派ミステリー。この作品が刊行されたのが十年以上前であり、現在の社会状況を鑑みると、宮部さんの先見の明というか、目の付け所はすごい。それと、文章から、作者本人が見えてこないところもすごい。人間、文章を書こうとすると、自分の経験でしか書けないため、どうしても本人の思想やら、嗜好が透けて見えてくるものだが、そこを自制してうまく殺している。多種多様な人間を描くためには、必要不可欠なことであり、十年以上、第一線で活躍している宮部みゆきの成功の秘訣はそこにあるのではないだろうか。