『楊家将』北方謙三
- 作者: 北方謙三
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2003/12/11
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読んで思ったのは、北方さんは歴史を描いているんではなくて、男を描いているんだなと。男はどう生き、どうあるべきか。そういった男子の生き様は、己の才覚や胆力がそのまま結果に繋がる乱世や群雄割拠の時代には分かりやすい形で現れる。だから、歴史に創作の場を求めているだけで、本質的には歴史ものである必然性はない。なので、歴史を知ることが目的の人にはこれはあまりおすすめできない(もちろん歴史ものである以上、ある程度の勉強にはなります)。たとえば、司馬遼太郎はストーリーの途中で、本筋とは直接関係のない歴史考察に紙数を割いたりするのだけど、北方謙三にはそれがない。物語のテンポが削がれてるのをなによりも恐れて、そういった歴史への言及はばっさりと排している。逆に言えば、歴史ものだからと敬遠している人もまったくの予備知識なしで北方ワールドへ浸れるので読んでほしい。感動します。物語の終盤は目頭が熱くなるのを抑えられなかった。あと、僕のような文型軟弱男子もぜひ。僕らに欠けているものがここにはある。途中で楊家長男延平の口を借りて披瀝される北方恋愛観とかも浮世離れしていてすごい。
「敵の女だ。認めたくないという気持ちがどこかにあり、それがおまえを塞ぎこませているのだ。敵であろうと、構うな。女は、抱いてしまえば、敵も味方もない。抱いた男のものなのだ」
豪快すぎて笑える。この磊落さの百分の一でも見習いたい。