『ABC戦争』阿部和重
- 作者: 阿部和重
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/05
- メディア: 文庫
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片側には保坂和志や村上春樹のような世界の実相である曖昧さをそのまま抽出しようとする小説の試みがある。その一方、ほんとは白も黒もない、混ざり合った灰色しかない世界を白だ、黒だと断定するのもまた小説に課せられた重要な役割だ。阿部和重は比喩表現を用いない作家である。それもまた曖昧さを排除し、小説をクリアにしていこうとする彼の姿勢を端的に表している。そして、『ABC戦争』はそんな彼流の一風変わった小説論なのかなとうがった見方をしてみる。
同時収録の「公爵夫人邸の午後のパーティー」、「ヴェロニカ・ハートの幻影」も斬新な企みの見られる作品で、このころの阿部和重はちょっとすごい。