『クビキリサイクル』西尾維新

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)

第23回メフィスト賞受賞作。

西尾維新の作品を文学などという人もいるわけだが、僕は決してそうは思わない。これはライトノベルである。ドブネズミがいくらかわいくてチャーミングであってもハムスターでないのと同じである。ただ、そのことをもって西尾維新を批判したり、軽視したりする気はさらさらない。ライトノベルにはライトノベルの純文学には純文学の良さがある。ただ、やはりライトノベル、もしくはアニメのお約束を踏まえていない人にとっては、これは理解に苦しむ作品だろう。そもそも純文学とライトノベルでは目的が違う。純文学においては、いかにリアリティーのある人物を描くかに主眼が置かれる。ライトノベルでは、いかに魅力のあるキャラクターを生み出すかに主眼が置かれる。なまじ、そこそこの語彙があり、文章力もまずまずなため、純文学的なものさしでこの作品は測られがちである。そのため、批判に曝されてしまうことになるわけだが、純粋にライトノベル視点に立てば、これは非常に良くできた作品と言えるのではないか。アクの強い魅力的なキャラクター、誰もが陥る自分は人とは違うんだという若者特有の自尊心、選民意識のようなものをくすぐる主人公、衒学的ナルシシズム、軽妙洒脱な台詞回し。西尾維新ライトノベルを書くことにおいては、ずばぬけたセンスの持ち主だと思う。

あとあとがきに笑った。遠まわしに自分のこと天才って言ってるようなもんじゃん。

「嘘です。あなたの顔を見たくないだけです」
「………」
「嘘です。そういう顔が見たかっただけです」