『二匹』鹿島田真希

二匹 (河出文庫)

二匹 (河出文庫)

第35回文藝賞に輝いた鹿島田真希のデビュー作。

宗教的なモチーフだとか実験文学っぽいところだとか後の鹿島田真希作品へと受け継がれていくところがいくつか散見される。ただ、物語として支離滅裂でどうしようもなく未完成であるし、ギャグも正直すべっている。才能はびしびしと感じるが、まだ技術が追いついてないので才能を小説の中へ封じ込め切れていない危うさがある。ようやく自らの才能の手綱を思いのまま操れるようになったのが今の鹿島田真希なのだと思う。それにしても、独特のイタさが文藝賞向きとはいえ、この作品の時点で将来の大成を予測した松浦理英子笙野頼子らの選考委員の慧眼はちょっとすごい。