『猫のゆりかご』カート・ヴォネガット・ジュニア

ヴォネガットが描く皮肉と風刺に満ちた世界の終末。知る人ぞ知る作家であったヴォネガットを一躍有名にした出世作

タイトルの猫のゆりかごとは、日本語で言うあやとりのこと。まさに一本の紐からはしごや富士山、東京タワーなどを生み出すあやとりのように、ヴォネガットは紙とペンのみで架空の物質から架空の国家、はたまた架空の宗教までこの作品で作り出している。その発想力には目を瞠るものがある。馬鹿馬鹿しさの裏にこっそりと真理が潜んでいるので、読み物としてもおもしろい上に、うならされる部分も多い。作品全体がメタファーとなっている一種の予言の書と言えないことも無い。いつかこの本の内容を笑えなくなる日が来るかもしれない。