『旅のラゴス』筒井康隆

旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)

SF風味の冒険小説。誰が読んでも楽しめる一冊。

風刺と諧謔に富んだひねくれた小説こそ筒井康隆なので、この正統派の娯楽小説はかなり異端な作品という位置づけになると思われる。どこかでおちゃらけるかと思ったけど、そんな予想はお構いなしに一貫して主人公ラゴスの旅と人生が壮大なスケールで綴られていく。ただラゴスが奴隷としてつかまってそのまま何年も経過してしまうあたりの容赦の無さに筒井さんらしさがでてると思った。普通の作家は作中の年月をあまり進ませたがらないものだけど、あっけなくそれをしちゃうのは構成がしっかり練られているからに他ならない。筒井康隆の実力のほどがそんなところからも垣間見ることができる。

ロードノベルともSFファンタジーとも恋愛小説ともラゴスの一代記ともはたまたラストあたりは文明の発展に伴う社会シミュレーション小説としても読むことができる。もちろん深く考えずわくわくただ楽しんで読むのもいいと思う。