『でかい月だな』水森サトリ

でかい月だな

でかい月だな

思春期特有の周りの世界への違和感、何者かに世界が侵食されていく感じ。この誰もが若かりし頃に一度は体験する中2病じみた違和感の正体をSFで表現しようとしたユニークな作品。

悪くはない。ただ、青臭すぎるかな。この手の思春期の葛藤を描いた作品は巷に氾濫しているだけに、SF風味で差別化を図ったところは良かったと思う。うーん、けどこの人にしかないものがあまり感じられなかった。せっかくのSF設定が中途半端なのも残念。もう一押し欲しい。人物造形もライトノベル的で安易な気が。わざとなのか?ツンデレで邪眼の持ち主のヒロインが出てきたのには笑った。

「そう。本当に必要だと思うなら、ひとは必ず暗記できる。それが証拠に君は自分の名前や住所を覚えているだろう。つまり暗記できなきゃ君はぼくの携帯番号なんて本当には必要ないってことさ。君は忘れ、ぼくはもう教えない」