『少女七竈と七人の可愛そうな大人』桜庭一樹

少女七竈と七人の可愛そうな大人

少女七竈と七人の可愛そうな大人

血筋の宿命に翻弄される無垢な少女の成長が繊細な筆致で描かれる。ナイーブでピュアなイメージの抽出に留まっていてこれだけだと中途半端なんだけど、この後に『私の男』や『赤朽葉家の伝説』が書かれた事を考えると飛躍のための重要な布石だったと思う。

ところで桜庭作品は少女マンガチックなところがあるのに、不思議と男でも抵抗感なく読める気がする。いや、そんなことないという人も多そうですが、個人的には親しみやすい作風。桜庭さんの少女を愛でる視線ってどちらかといえば男性的な側面が強いと思う。谷崎や川端を思わせるいい意味での執着、変態性みたいなのを感じる。根源の部分に作者のフェティシズムがあるから、ライトノベル的な人物造形でも少女が映えてみえる。たとえ少女マンガのフォーマットで書かれていても根底にある少女愛みたいなものは男の方が共感しやすいものだからそこらへんに理由があるのかな。なんかこうやって書くと自分がただのロリコンなだけの様な気もしてきたけど、処女信仰みたいな無垢なものを希求する価値観って多かれ少なかれ男にはあるんじゃないかなぁ。男のそういう部分と桜庭一樹の世界観は通底していると思うわけです。あと、この本の装丁は結構好き。