『震度０』横山秀夫

震度0 (朝日文庫 よ 15-1)

一人の県警幹部の失踪を発端に署内の人間達の思惑が入り乱れる様を描いた警察小説。

県警内部の群像劇なのだけど、いまいち警察組織の仕組みを理解していないので誰が誰だか最初のほうは混乱してしまった。群像劇自体は好きなので、組織について明るければもっと楽しめたと思う。その意味では巻頭にある登場人物と部屋割りの見取り図は重宝しました。

保身と野心で突き動かされる人間達の浅ましい姿をありありと浮かび上がらせる手腕はさすが。ただ、正直、阪神大震災を出してきた必然性が薄かったように感じられた。己が進退に係わり合いのある失踪事件にのみ拘泥する幹部達の醜さが、震災を引き合いに出すことで引き立っているのは間違いない。ただ、結局そのためのみに震災を利用しているに過ぎないのはあんまりだと思う。それって横山さんがこの小説で批判していた姿勢そのものなのでは？おもしろいことはおもしろいのだけど、そこに引っかかってしまいなんだか釈然としなかった。