『天国までの百マイル』浅田次郎

天国までの百マイル

天国までの百マイル

天才的外科医がいるという田舎の病院までの行程は百マイル。人生のどん底にいるおっさんが慣れないワゴンを運転して百マイルを進む理由はただひとつ。病気の母親を救うため。

母親×病気の組み合わせは反則。こんなの感動できるに決まってるじゃん。これ以上ないくらいあざといので浅田次郎の楽しみ方はいかにこのあざとさに酔えるかということだろうか。おばけ屋敷の逆バージョンだよね。不意の感動とかじゃなくて、感動するために読む。ここまであけっぴろげだと、なんかあんまり抵抗感なく受け入れられるけど、そこが浅田次郎の魅力なんだろうなぁ。でも他の人が同じ手法を取ったら、絶対叩きたくなるから彼の人徳によるところも大きいのかな。彼だから許されてるところは絶対あると思う。あと作中に出てくる医学知識が細にわたっていて、きっちり下調べをする努力家の一面が垣間見られる。大味な作風に見えて、ディディールを蔑ろにしないのは浅田次郎の良いところだ。