『妙なる技の乙女たち』小川一水

妙なる技の乙女たち

妙なる技の乙女たち

東南アジアの多国籍国家と宇宙事業とそこで働く女性たち。ページをめくるたびに、そこには自分の知らない世界が溢れていてすっかり魅了されてしまった。宇宙産業で賑わう異国を舞台に仕事と女性にスポットを当てた連作短編ものを書きません?きっとそんなノリで編集から企画を提案されたんじゃないかと思うんだけど、それで実際コンセプトと一分の狂いもなく書けちゃうとこがすごい。だって、小川一水自体はどの仕事も体験したことがないはずだし、東南アジアに行ったことがあるかすら怪しい。自分の経験を文章化することも難しいのに、知らないことを参考文献と後は想像で補ってこのレベルのものができるのが驚き。直木賞を取っている作家さんたちと比べてもこの人は遜色がないと思う。それと、この作品の女性の描き方が男性目線に傾きすぎていないのが良かった。そうじゃないと女性たちを主役にした意味がないしね。男が書くとどうしても自分の理想の女性像を反映しがちなので。予定調和の向きがあるので少し物足りなくもあるが、さすがの完成度だった。