『【新釈】走れメロス』森見登美彦

新釈 走れメロス 他四篇

新釈 走れメロス 他四篇

古典文学の名作を本歌取りし、森見風に大胆にアレンジした短編集。

もともと、森見登美彦の作風自体が古典文学のパロディーみたいなものだから、下敷きになった古典の雰囲気を損なうことなく、かといって自らの個性を殺すこともなく上手に料理できていたと思います。五編のうち三篇しか知らないんだけどね。タイトルになっている「走れメロス」は、明らかにパロディしやすい作品なので、いつもどおりの森見節で無難な出来映え。むしろ男と女の微妙な機微を描いた「藪の中」と「桜の森の満開の下」が出色の出来だと思った。妄念を擬人化したような黒髪の乙女が森見作品の代名詞とも言えるけど、僕は森見さんの描く男の思惑通りに行かない魔性の女好きだなぁ。